食道疾患
1.食道ガン
食道粘膜上皮から発生する悪性腫瘍。組織学的には90%以上が扁平上皮癌である。
『疫学』
60歳以上の高齢男性に多い
悪性腫瘍の死因第5位
男女比5:1
『成因・病態生理』
成因は明らかでない。危険因子とされているのはアルコール、喫煙、熱い食物
発生部位は中部食道に多く、次いで下部食道に多い。
『症状』
初期は無症状、あるいは嚥下時にしみる程度
進行癌では、食道狭窄による嚥下困難 → 体重減少
周囲臓器への浸潤による症状
・食道・気管支瘻の形成により嚥下性肺炎
・大動脈への浸潤により大出血を起こす吐血
・反回神経を巻き込むと声帯が動かなくなり嗄声
・交感神経を巻き込むと同側の眼瞼下垂、縮瞳(ホルネル症候群)
・迷走神経圧迫刺激で徐脈
・上大静脈を圧迫した時は顔面浮腫(上大静脈症候群)
『診断』
早期発見には内視鏡検査が有用。
ルゴール塗布による観察・生検組織診断。透視検査(病変の部位・進展の判定)
肉眼的分類は胃がんとほぼ同様。
『治療』
早期癌では内視鏡下粘膜切除術(ポリペクトミー(ポリープ切除術)
進行したものには外科手術による切除が基本的
手術不能例には放射線治療・化学療法あるいは食道ステントによる食物通過路確保
等で対応
『予後』
5年生存率は進行度によって異なるが20%前後と考えられている。
参考:臨床医学各論 第2版